■総括安全衛生管理者
総括安全衛生管理者は、事業者が事業場ごとに、その事業を実施を統括管理する者から選任することとなっています。例えば、工場では工場長、店舗なら店長、支社・支店では支社長・支店長など経営のトップがその任に当たることとなっています。
選任は、選任すべき事由発生した日から14日以内に行い、遅滞なく所轄労働基準監督署長に選任報告書を提出しなければなりません。また、職務ができない時は、代理を選任しなければなりません。
総括安全衛生管理者の職務は、次の業務を統括管理することです。
①労働者の危険又は健康障害を防止するため措置に関すること
②労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること
③健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること
④労働災害の原因の調査及び再発防止に関すること
⑤その他労働災害を防止するため必要な業務
⑥安全衛生に関する方針の表明に関すること
⑦危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置(リスクアセスメント等)に関すること
⑧安全衛生に関する計画の作成、実施、評価及び改善に関すること
衛生管理者の業務内容と同じですが、役割が違います。上記の内容ついて、総括安全衛生管理者は「統括管理」つまり、「うちの会社は安全衛生をこうやるぞ!」というふうに会社の方針を出し、ちゃんとやっているかどうか監督をするのが仕事になります。安全衛生の経験や知識よりも部下に対して指示ができて旗が振れるだけの「権限」の方が重視されるため、事業場のトップが自動的になるわけです。ですので、衛生管理者は試験を受け免許が必要となりますが、総括安全衛生管理者は免許は必要ありません。
■産業医
産業医は、1938年(昭和13年)に旧工場法の省令が「工場医」を規定し、工場労働者の傷病の治療と感染症の予防にあたっていました。けがをした労働者を処置し早く仕事に戻ってもらうためです。その後、1972年に労働安全衛生法が「産業医」を規定し、その職務は次のようになっています。
①健康診断の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること
②長時間労働者に対する面接指導及びその他必要な措置の実施並びにこれらの結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること
③心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)の実施並びに面接指導の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること
④作業環境の維持管理に関すること
⑤作業の管理に関すること
⑥その他、労働者の健康管理に関すること
⑦健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること
⑧衛生教育に関すること
⑨労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること
産業医は、常時50人以上の労働者を使用している事業場において、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識について、一定の要件を備えた医師のうちから選任します(ただし、事業の代表者、事業の実施を統括管理する者は産業医として選任できない)。
なお、常時1,000人以上の労働者を使用する事業場又は高熱物体を取り扱う業務等の一定の有害業務に常時500人以上の労働者を従事させる事業場では、その事業場に専属のものを選任する必要があります。また、常時3,000人を超える労働者を使用する事業場にあっては、2人以上の産業医を選任するえ必要があります。
産業医は、選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任し、また、選任した場合には、遅滞なく所轄労働基準監督署長に報告しなければなりません。
上記の職務を行うことが、労働安全衛生規則第14条に定められており、必要があると認めるときは、事業者にに対して必要な勧告をすることができるとされており、これも重要な職務の1つです。
また、少なくとも毎月1回(事業者か衛生管理者が行う巡視の結果等が提供される等、一定の要件を満たすときは、少なくとも2月に1回)作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければなりません。
さらに、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」による労働安全衛生法の改正により、事業者は、産業医に長時間労働者の状況や労働者の業務の状況などの情報を提供しなければならないことや産業医から受けた勧告の内容を(安全)衛生委員会に報告しなければならない等、産業医・産業保健機能の強化が図られています。