過重労働による健康障害防止対策について(その1)

(1)過重労働による健康影響

 長時間にわたる過重な労働は、疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられ、さらには、長時間労働による睡眠時間の短縮は、脳、心臓疾患の発症との関連性が強いという医学的所見が得られています。

 業務は、程度の差はあっても心身に負荷をかけます。負荷に対する反応をストレス反応と言いますが、その反応は個々人によって異なります。また、一般的な日常の業務などによって生じるストレス反応は一時的なもので、休憩・休息、睡眠などによって元に戻り得ます。しかし、慢性的な長時間労働などが続いた場合にはストレス反応は持続し、それが長時間持続すると疲労の蓄積として自覚されるようになります。

 過重労働は、単に労働者の健康障害の要因となるだけではなく、労働者の集中力や作業効率を低下させて労働災害を引き起こす可能性もあり、その対策は事業場全体で講じる必要があります。

 一方で、職場には、就業形態、家事分担、生活習慣、健康状態などの異なる労働者が就業しており、過重労働によって健康障害を生じるかどうかは個別に異なります。ですので、労働者が健康な職業生活を送ることができるように、労働者の健康状態を含む個別の状況を勘案しつつ、労使が連携して過重労働対策を推進することが重要です。

 そこで、対策を考える上では、長時間労働の他にも、不規則な勤務、拘束時間の長い勤務、出張の多い業務、精神的緊張を伴う業務などの労災認定基準の負荷要因、業務内容、職場の人間関係などの職場のストレス負荷要因、家族環境などの職場外のストレス負荷要因や、年齢、飲酒、喫煙などの生活習慣、高血圧・脂質代謝異常症などの基礎疾患などの個人要因について考慮することが必要となります。

(2)過重労働の把握

 過重労働対策のためには、まず、過重労働状態にある労働者を把握する必要があります。事業場においては、面接指導の対象となる労働時間等も考慮して、長時間にわたる労働や疲労の蓄積がみられる労働者を把握します。

 過重労働対策では、単に脳・心臓疾患だけが対象とはならず、メンタルヘルス不調の早期発見なども期待されています。そこで、過重労働にある労働者の把握のためには、労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリストや家族による労働者の疲労蓄積度チェックリストなどの労働者の疲労の状況を調べる調査票を利用する方法も示されています。

疲労蓄積度チェックリスト (www.mhlw.go.jp/topics/2004/06/dl/tp0630-1a.pdf