人間が就業する事務所の空気環境には、温熱環境の物理的な条件のほかに、粉じんや二酸化炭素、ホルムアルデヒドなどの様々な化学物質や、かぜウイルスやダニなどの生物学的因子が存在する可能性があります。
ビルなどの室内の空気は、屋上に設置した設備で外気外気と換気しながら給気と排気がなされていることが多いですが、温度調節や加湿の効率を保つために、一定の割合で循環させています。
換気量、循環空気量の割合、そして室内の就業者数によっては、二酸化炭素濃度が徐々に上昇することもあります。その際は、浮遊粉じんなども上昇すると考えられます。
労働安全衛生規則と事務所衛生基準規則は、排気設備が設置されていない場合は、直接外気に向かって空気を開放できる窓や開口部の面積を、常時、床面積の20分の1 以上になるようにしなければならないことを規定しています。
また、気積は設備の占める容積および床面から4mを超える高さにある空間を除き、作業者1人につき10㎥以上としなければなりません。
事務所衛生基準規則では、室内空気の環境基準について、
・一酸化炭素濃度 50ppm以下
・二酸化炭素濃度 0.5%以下 と規定しています。
また、空気調和設備を設けている場合、室に供給する空気は、
・浮遊粉じん 0.15㎎/㎥以下
・一酸化炭素 10ppm以下
・二酸化炭素 0.1%以下
・ホルムアルデヒドの量 0.1㎎/㎥以下
・気流 0.5m/s以下
また、
・室内の気温 17~28℃
・湿度 40~70% という数字を示しています。
さらに、温度が10℃以下であれば暖房すること、冷房実施の時は外気温より著しく低くないことを定めています。
屋外へ排気筒などが付属していない暖房器具やガス調理器がある場合などは、一酸化炭素等が貯留しやすい室内環境になることに十分に注意し、調理器の付近に独立の換気扇を設置したり、こまめに窓を開けたりするなどして換気を行う必要があります。
また、灯油による暖房器具からは、様々な石油系炭化水素が発生し、不完全燃焼によって一酸化炭素が発生することがあることにも注意して、十分な換気を行う必要があります。調理場などの生ごみなどは、異臭を発生させることがないように、こまめに廃棄しましょう。
冬から春にかけて相対湿度が40%未満になって乾燥する場合は、加湿器を利用しましょう。さらに、建物内に喫煙室や喫煙コーナーが設置されている場合は、タバコ煙が天井まで上昇することから、天井部分には隙間のない隔壁を設けること、非喫煙区域と喫煙区域の境界面では、喫煙区域に向けて0.2m/sの気流が常時確保されるよう喫煙区域からの換気を十分に確保することが重要です。
これは、喫煙区域周辺において、浮遊粉じんの測定によって粒子状のタバコ煙の漏れがないことが確認されていても、タバコの臭いのミストやガスは粉じんよりも粒径が小さく、非喫煙区域側に漏れていることがあるためになります。