衛生管理者が「労働衛生」を担当するときに、まず必要なのは「労働衛生」の目的あるいは目標が何かを認識することではないかと思います。
では、そもそも「労働衛生」とはどういう意味なのでしょうか?
辞書で確認すると、「労働」とは、「体や頭脳を使って働くこと」、「衛生」とは、「健康を守り、病気を予防すること」また「管理」とは「良い状態が続くように処理すること」とあります。
つまり、「働いてる時、働いている場所において、健康を守り病気にならないよう予防し、そのよい状態が続くようにしていくこと」ということになります。
ILO(国際労働機関)とWHO(世界保健機関)が1950年に採択し、1995年に改訂した「労働衛生の目的」では、次のようにうたわれています。
「あらゆる職業に従事する人々の肉体的、精神的及び社会的福祉を最高度に増進し、かつこれを維持させること。作業条件にもとづく疾病を防止すること。健康に不利な諸条件から雇用労働者を保護すること。作業者の生理的、心理的特性に適応する作業環境にその作業者を配置すること。以上を要約すれば、人間に対し仕事を適合させること、各人をして各自の仕事に対し適応させるようにすること(後段省略)」
「こんなの当たり前じゃないの?」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、これが「当たり前」でいられるように、我が国でもきちんと法律で定められています。
それが「労働安全衛生法」で、衛生管理者が活動していく上での根拠法の1つになります。
労働安全衛生法の第1条には、このように規定されています。
「この法律は、労働基準法と相まって、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講じる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする」
法律の文章はわかりにくいので、解説させていただくと、
①職場における労働者の安全と健康を確保する
②快適な職場環境を形成を促進する
この2つの目的を達成するために、「労働基準法」という法律と一緒になって、
①危害防止基準の確立
②責任体制の明確化
③自主的活動の促進
この3つの手段を講じていきますよ、となります。
また、「労働安全衛生法」第3条第1項には、「事業者の責務」が次のように規定されています。「事業者」とは「事業を行う者で、労働者を使用する者」をいいます。
「事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけではなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。(後段省略)
衛生管理者は、この「労働衛生管理」を実践する際、事業場のトップである事業者やそのほかの労働衛生を担当するスタッフと一緒になって、「働いてる時、働いている場所において、健康を守り病気にならないよう予防し、そのよい状態が続くようにしていくこと」に取り組むことが重要になります。