さて、職場の安全と衛生を確保するのは、事業者(事業を行う者で労働者を使用する者をいいます)の責務です。このため、労働安全衛生法では、事業場のトップが安全衛生管理のリーダーシップをとり、衛生管理者が実務を行っていきます。
衛生管理者の役割は、「衛生管理者とは」にも記載していますが、労働安全衛生規則第10条及び第3条の2に、次のように規定されています。
1.労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること
2.労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること
3.健康診断実施その他健康の保持増進のための措置に関すること
4.労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること
5.安全衛生に関する方針の表明に関すること
6.危険性または有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置に関すること(リスクアセスメントと低減措置)
7.安全衛生に関する計画の作成、実施、評価及び改善に関すること
これらを行う事業場のトップをサポートしていくのが衛生管理者の役割と言えるでしょう。
併せて、労働安全衛生規則第11条では、衛生管理者の職務等として、
・少なくとも毎週1回作業場等を巡視し、設備、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するための必要な措置を講ずること
・事業者は、衛生管理者に対し、衛生に関する措置をなし得る権限を与えなければならないこと
このように規定されています。
作業場を巡視することを「衛生パトロール」と呼んでいる事業場もあるかもしれませんね。
例えば、作業場を見て回り、「ここの蛍光灯が切れかかってるな」「手洗い場が汚れているな」「救急箱の中に不足するものはないかな」としっかり見て回らないといけないということが義務になっています。
AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)をはじめとする技術革新の急速な進展、本格的な少子高齢化社会の到来等に伴い、労働者を取り巻く環境も大きく変化しています。また、労働者の健康に対する意識は、国民生活の質的向上志向と相まって、心身両面にわたる健康の保持増進へと大きく変化しています。
一方、サービス経済化の著しい進展に伴い、非工業的業種である第3次産業では、就業者数の著しい増加がみられ、これらの産業で働く労働者のための衛生管理は、有害業務に関する職業性疾病や作業関連疾患の予防よりは、生活習慣病対策、VDT対策、職場環境・労働態様の大きな変化に伴うストレス対応(メンタルヘルス対策・過重労働対策)、さらには事業所における衛生管理等が中心となってきています。
「こんなにたくさん一人では無理だよ!」と思われた方も多いと思います。
これらのことを効果的に推進していくために、事業場に「安全衛生管理体制」を確立し、様々な人物が関わってくることになります。
そして、衛生管理にかかわるスタッフのキーパーソンとなるのが衛生管理者であり、非常に期待されているポジションであるといえるでしょう。