安全衛生教育(その1)

 職場における労働衛生管理は、作業環境管理、作業管理、健康管理の3管理に加え、総括管理、安全衛生教育を一体となって進める必要があります。特に、関係する作業環境や設備、取り扱い方法について、労働者に十分な知識・技能を身につけていただくことが、職場における安全衛生管理を効果的に進める前提になります。それは、過去の幾多の職業性疾病発生事例をみても明らかです。

 このようなことから、労働者に必要な知識・技能を習得していただき、訓練することにより、業務上の疾病のみならず、作業関連疾患及び一般的な疾患の防止を図ること等を目的として安全衛生教育が展開されていくことになります。

■労働安全衛生法と安全衛生教育

 労働安全衛生法第59条においては、「事業者は労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行わなければならない」とされており、各種の安全衛生教育を事業者に求めています。

 具体的な安全衛生教育の内容については、労働安全衛生規則第35条に、規定されています。まず、安全衛生教育をどのタイミングで実施するかですが、

・労働者を雇い入れた時

・労働者の作業内容を変更した時

になります。

 安全衛生教育の内容は次の通りです。

①機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱い方法に関すること

②安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取扱い方法に関すること

③作業手順に関すること

④作業開始時の点検に関すること

⑤当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること

⑥整理、整頓及び清潔の保持に関すること

⑦事故時等における応急措置及び退避に関すること

⑧前各号に掲げるもののほか、当該業務に関する安全又は衛生のために必要な事項

 さて、労働安全衛生規則第35条には、ただし書きがあります。一部の業種では、①~④までを省略することができる、とされています。では、どのような業種でしょうか?表にまとめるとこのようになります。

 

業種名

①~④

⑤~⑧

第一号

林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業

省略できない

第二号

製造業(物の加工業を含む)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業、機械修理業

省略できない

第三号

上記以外の全ての業種

(例:金融業、警備業、飲食業、医療業 等)

省略できる

省略できない

 安全衛生教育の内容をよく見ると、①~④は、機械の危険性や有害性、安全装置、作業手順、作業開始の点検といった機械の使い方の内容になっています。

第三号の業種は、イメージとしてはサービス業をイメージなさってください。例えば、アイトク保健師事務所のように、教育といった内容の仕事なら危ない機械を使うことはまずないですよね。なので、第三号の業種であれば、危ない機械を使うことは少ないでしょうから省略していいですよ、ということになります。

 また、労働安全衛生規則第35条の2には、事業者は、①~⑧の内容の全部又は一部に関し十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、省略できるとあります。

 これは、例えば、産業医の先生に事業場に常駐していただくことになったので、医師を雇用しようという時に、医師に私達が疾病・病気のことを教育するというのは、どう考えても医師の方が詳しいわけです。それくらいの知識を持っていたら省略してもいいですよ、という例外的なものになります。